林 (3)
大型の縦型カンヴァスを連結させた圧倒的なスケール感を持つ大作です。画面の端から端までを一気に貫く長いストロークが、樹皮を流れ落ちる雨水や木立を吹き抜ける風の軌跡を視覚化しています。
青と赤の複雑な階調が、静寂の中に潜む森の「息づかい」と空間の奥行きを鑑賞者に迫り出させる、本シリーズの一つの到達点と言える作品です。
Forest
Concept Statement
そもそも、この「森林」シリーズの端緒は、生命を育む母体(マトリックス)としての森を、根源的な「うねり」として捉えることから始まりました。自然界を構成するあらゆる物質を微視的に捉えれば、すべては原子の集積と波動に還元されます。当初は、その波動力学的なエネルギーの奔流から分岐するように、画面の端から端までを一気に貫く長いストロークを用いていました。それは光や風の軌跡といった動的な要素を孕みながら、無数の幹の連なりを生み出し、空間を物理的なマチエールとして立ち上げる試みでした。
しかし近年、その表現はより微細で細かい筆致へと移行しています。無数の絵の具の粒子がキャンバス上で極限まで凝集していく過程で、私は「森はやがて岩に近づくのではないか」という確信を深めました。かつてバロック時代の人々が、人工と自然が渾然一体となったグロッタ(洞窟)や「岩の森」に宇宙の真理を見出し、物質の無限の襞(ひだ)のなかに生命の躍動を感じ取ったように。微視的な筆致の堆積は、有機的な植物相を、悠久の地質学的時間を内包した強固な鉱物へと変容させます。それは単なる風景の表象を超え、生命と無機物、波と粒子が交錯する、世界(あるいは単位世界)そのものの構造をキャンバスに現前させる行為なのです。
大型の縦型カンヴァスを連結させた圧倒的なスケール感を持つ大作です。画面の端から端までを一気に貫く長いストロークが、樹皮を流れ落ちる雨水や木立を吹き抜ける風の軌跡を視覚化しています。
青と赤の複雑な階調が、静寂の中に潜む森の「息づかい」と空間の奥行きを鑑賞者に迫り出させる、本シリーズの一つの到達点と言える作品です。
三水の森が内包する複雑な生態系と地脈のエネルギーが、幾重にも重なる鋭利な筆致によってカンヴァスに定着した作品です。
具体的な形への依存を手放し、手の痕跡とキャンバスの端から端へと続くストロークだけを純粋に追いかけた結果、幾何学的でありながらも有機的な熱を帯びた「森の構造」が析出されました。
柔らかな光を帯びた有機的な塊が、闇の奥底からうごめくように立ち上がる作品。特定の植物や地形を描いたものではなく、絵の具の物質性と長いストロークの反復の中で生まれました。まるで森林が隠し持つ骨格や内臓のような、生々しくも神聖な気配を孕んでいます。
深い森の奥で交錯する光と影の空間を一度解体し、再構築したかのようなアプローチ。色彩は沈み込み、青と灰色の重厚なマチエールが画面を支配しています。視覚的風景というよりは、山中という「場」が持つ重力や湿度の記憶そのものを定着させる試みです。
現実の固有色から完全に解放され、森が内包する生命のエネルギーそのものを鮮烈な色彩として抽出した作品です。画面全体を縦に貫くピンクやシアンの長いストロークは、網膜に映る単なる視覚的風景を超え、見る者の神経系に直接訴えかけてくるようなプリミティブな躍動感に満ちています。
正方形の特異な画面の中で、色彩が渦を巻くように中心へと収束していく力強いコンポジション。端から端へと大胆に伸びる筆致が描くという身体的行為のリズムを刻み、そのままカンヴァス上の「息吹」として結実しています。
森林を単なる自然環境としてではなく、一つの巨大な「胎内」として捉え直した作品です。なめらかで官能的な曲面を持つストロークが絡み合い、画面の奥深くへと視線を誘い込みます。風景画でありながら、脈打つ肉体としての温もりを強く感じさせる仕上がりとなっています。
白く差し込む光のようなストロークが、木立の隙間を抜ける空気の冷たさと透明感を見事に表現しています。油彩特有の粘り気を残しながらも、上方に向かって薄れていく幹の連なりが、物質の境界が溶けていくような神秘的な空間を創り出しています。
水平方向への広がりを意識した構図の中に、縦に貫く長いストロークによる微細な色彩の揺らぎが配置されています。森の中の静寂と、葉擦れの微かなざわめきが共存する世界。幹の集積による光の反射と透過だけで「そこにある空間」の本質を捉えた作品です。
「森林」という主題に対する初期のアプローチ。色彩の要素を極限まで削ぎ落とし、モノクロームに近い階調の中で形態の「うねり」そのものに焦点を当てています。後の作品群に繋がる流動的なフォルムの原点とも言える、骨太で力強い筆致が特徴です。
ここで試みられたうねるような形態の追求と空間把握は、後に制作される『森(の息吹)』シリーズにおける、生命の胎動を感じさせる官能的でダイナミックな画面構成へと直接的に結実していくことになります。
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