「難民(子ども)/ Refugees」シリーズは、シリア内戦・アフリカ・ケニアのイフォ難民キャンプで撮影された報道写真を起点に制作された油彩作品群だ。写真という瞬間の証拠を、絵画という時間の堆積へと変換することで、これらの像に別の生を与えようとした。
子どもたちが写真に写った。精度を誇るレンズが「あった」という瞬間を固定する。しかしその多くは、永久に失われた。写真は光の記録として事実を凍結させるが、絵画は、その事実を見る者の身体へと接触させる。カンバスに堆積する絵の具の荒い肌、重なり合う色の層——それは客観的な複製ではなく、画家の眼と手が対峙し、問い直した「存在の記憶」そのものだ。
このシリーズを描き始めたとき、私は絵画に何ができるかより、絵画が何をしなければならないかを考えていた。報道写真はすでにそこにある。環境のなかで見ようと思えば見られる。しかし、見られていない。溢れるイメージの中で消費されるだけの像に対して、あえて油彩を選んだのは、その物質としての永続的な重さのためだ。写真が瞬きの一閃であるなら、油彩は時間そのものの地層だ。
一枚の絵を前にして、私たちは統計という巨大な数字のなかの無名の一人ではなく、一人の子どもの顔、その固有の眼差しと真正面から向き合うことになる。「見ること」の倫理——それは安全な場所からの傍観を許さず、私たちがそこから何を受け取るかという、内なる応答責任の始まりを告げている。