失われつつある土地の記憶を巡る、長野・銀座の巡回展。
北野カルチュラルセンターから始まり、東京・銀座へと展開された巡回展。津田翔一が描出する油彩の「異体」や土地の記録が、それぞれの場所が持つ地脈と交差します。大規模な展示空間から、都市の濃密なホワイトキューブへ。異なる時空で展開された展示風景を記録します。
クリエイター育成支援事業
土地には記憶がある。左美都の泉は涸れても,その水脈は絵の具の中を流れ続ける。
私が描くのは風景ではなく,地そのものが抱いてきた〈いと〉である。
Nagano — Main Gallery
空間を呑み込む色彩と、
その基盤となる「左美都の神話」
北野カルチュラルセンター1階。広大な空間を覆い尽くすのは、土地の記憶を内包したダイナミックな大型油彩群です。それらは単なる絵画にとどまらず、奥に展示された「左美都」の神話や伝承というコンテクストの地層の上に立ち現れています。
空間と絵画の共鳴
対象の輪郭を溶かすような特異な筆致。磨き上げられた石床がその色彩を鏡のように反射し、鑑賞者はいつしか作品と空間の境界を見失い、巨大な絵画空間そのものに取り込まれていきます。傍らには、その土地の土を用いた陶芸作品もひっそりと添えられ、かすかな土地の痕跡を残しています。
創造の源泉としての「伝承」
展示空間の奥へと進むと、左美都研究会による書籍『左美都の神話と伝承』やリサーチ資料の数々が立ち現れます。大蛇伝説や楯の城の攻防、名もなき人々の物語など、この地域に息づく伝承がテキストとして提示されています。
絵画群は単なる抽象表現ではなく、この民俗学的なコンテクストという深い地層を基盤にしています。アートとリサーチが交差することで、ハイブリッドな歴史の全貌が浮かび上がります。
Nagano — Special Gallery
映像インスタレーション
——流動する大地の記憶
3階の深い暗室に足を踏み入れると、かつて左美都に存在した沢や草むらのイメージが巨大な壁面に投影されています。それは風景の再現ではなく、土地が抱く非物質的な「気配」そのものです。
身体と風景の境界
プロジェクターの光と、そこを横切る鑑賞者の身体。自身の影が投影された風景の一部となり、見る者と見られる対象の境界が緩やかに溶け出していきます。
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かつて左美都に溢れていた水脈。その流動性は、デジタル映像という現代の筆致によって、再び空間へと溢れ出します。
Ginza
都市の空白に、地脈を再構築する
巡回展の最終地、東京・銀座。都心のホワイトキューブにおいて、インダストリアルな要素が残る白い壁面が、左美都の流動的な色彩を鮮明に浮き彫りにします。
空間を呼吸する油彩
ホワイトキューブ特有の強い照明と露出した配管。無機質な都心の空間において、油彩の強固な物質感と「異体」の生々しい気配がより一層際立ちます。画面を縦断する線は、地下から這い上がる水脈のように空間を繋ぎます。
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知覚の地層を解く
展示の奥壁には、左美都研究会の調査パネルと記録映像が整然と並びます。油彩として定着したイメージの裏側にある、膨大な「事実」と「語り」。これらが一体となり、都市の空白において思想的奥行きを形成します。