SAMIZU
MYTHOS
左美都の神話と伝承 展示風景

About the Series

なぜ私たちは、この円環から
抜け出すことができないのでしょうか。

かつて左美都の土蔵に眠っていたとされる無数の木簡。そこには、畿内から突如としてもたらされた「文字」という名の抽象的な暴力と、それに抗い、あるいは侵食されていく農民たちの姿が記されていたという。本シリーズは、毛虫が蝶へと羽化する決定的な変容に魅入られた少女・サララと、終わりのないアケビの森の幻視——土地に堆積した不穏な伝承の断片を、一枚の長大な絵画として現前させる試みである。
01 / Labor

身体と土の呪縛

過酷な肉体労働に縛り付けられた農民たち。その中で異様に白い肌を持つ少女サララは、土を耕す日常の反復に生身を削り取られるような痛みを覚えていた。

02 / Symbols

文字という侵略

畿内の役人がもたらした得体の知れない概念。砂に描かれては消える記号の体系は、土着の人々の精神を暴力的に解体し、再構築していった。

03 / Loop

アケビの幻視

山道で突如囚われた空間の異常。何度歩いても同じ完璧なアケビが見つかる狂気の中で、彼らは果肉の中にぎょろぎょろと動く眼球を幻視した。

Series左美都の神話と伝承
Medium油彩 / インスタレーション
Site左美都(長野県長野市信更町三水)
Theme〈文字〉と〈円環〉— 左美都の伝承
展示室全景、連作絵画
FIG. 01 — INSTALLATION VIEW 会場全景。土地の記憶が一枚の長大な絵画として展開する。
連作絵画 部分
Chapter I

脱領土化 — 記号の森へ

生まれた土地から引き剥がされ、見知らぬ呪術者のもとで「文字」を脳髄に刻み込む日々。農作業を遥かに超えるその抽象の苦痛は、農民たちの精神を次々と崩壊させていった。

絵画空間における油彩のストロークは、自己の輪郭が解体され、新たな認識の地層へと再編されていくこの暴力的な運動をなぞるように重なり合う。

長大な絵画、湾曲した展示壁
FIG. 02 — CURVED WALL 湾曲する展示壁にあわせ、連作は途切れることなく続いていく。
作品ディテール、色彩の交差
Chapter II

再領土化 — 肉と眼球の森

「真っ白で長い外皮に包まれた薄い紫色の果肉が三人を見ていた。まさに、果肉が三人を見ているのだった」

知識を宿して帰還する山道で、彼らは無限に続く「アケビの反復」という時間の檻に閉じ込められる。甘い果肉の奥にうごめく眼球に見つめられながら、自我が自然現象の背後へと溶け去る根源的な恐怖。色彩は、その停滞と狂気から逃れようとする平手打ちの破裂音のように、鮮烈に画面を切り裂く。

作品の対岸
対岸の壁面 — 暖色から寒色への移行
正面ディテール
ディテール — 正面からの視点
青の連作
湾曲壁面に沿う連作
色彩の連作
色彩の階層
筆致ディテール
筆致のディテール
幾何学的な構成
ディテール — 幾何学構成
垂直のストローク
ディテール — 垂直のストローク
湾曲壁先の作品
湾曲壁の先、小品との呼応
Archival Fragments

土地に堆積した史料

語ることを奪われ、憑かれたように木簡に難解な記号を彫り続けた沼持の沈黙。会場に点在する平安期の土師器や古文書の断片は、かつての閉ざされた村落の記憶と、そこに舞い続ける幻の蝶の存在を静かに証明している。

史料展示風景
史料展示風景
解説パネルと史料
解説パネルと展示史料
町問屋御普請受拝帳
町問屋御普請受拝帳の断片
土師器 坏
土師器 坏
古文書の断片
FIG. 03 — ARCHIVES 土地の記憶を物語る古文書の断片。
展示室全景
展示室全景 — 照明の陰影
ベンチと作品
展示室 — ベンチと作品
史料展示セクションへの視点
史料展示セクションへの視点

「これがお前自身の影だとしたら……」
時間は停滞し、同じ行為の反復の中に我々は飲み込まれていく。

— 左美都の神話と伝承、より

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