Cataloguing Finds 000 Locating: 36.0000°N 137.9500°E
G.L. -0.0m表土層
N
36.0000°N 137.9500°E — 伊那 調査区
EXCAVATION RECORD — SITE 三水 — 2023
SURVEY RECORD / 調査記録FIND 001 / 039
調査地:伊那 出土想定域:三水

壁に風景を、
中央に遺物を。

若手作家公募個展「トライアル・ギャラリー」2023 — 調査記録
The Origin Stratum of Samizu
Descend
Survey Overview

発掘という所作を、展示に借りる

遺跡名
三水(出土想定域)
調査地
伊那市内 公募展示会場
会期
若手作家公募個展
「トライアル・ギャラリー」2023
手法
油彩 / 想定復元資料 / 口頭調査
調査主体
津田 翔一

「壁には風景を、中央には、そこから出土したと見立てた器の破片を置く。展示室そのものを、ひとつの発掘区画に見立てること。」

公募という、不特定多数の視線に晒される場で、津田翔一が試みたのは、絵画の展示に考古学的な展示空間の文法を借用することだった。壁面には三水の風景を断片化して描いた油彩を掛け、会場中央のガラスケースには、そこから出土したと見立てた木製の匙や土製の耳飾りの欠片——実在しない集落の記憶を宿す「想定復元資料」——を並べた。絵画は壁面資料として、造形物は出土遺物として、それぞれの立場を演じる。鑑賞者は知らぬ間に、展示室を歩く来場者から、遺跡を歩く調査員へと役割を変えていく。

2026年の現在から振り返れば、この構成そのものが、後年「左美都の神話と伝承」として結実していく手法の、最初の試掘であったことがわかる。虚構の土地に、虚構の史料を与え、その史料を通じて土地の記憶を語り直す——という方法論は、まさにここから掘り始められている。本ページは、その最初の発掘区画の記録である。

NOTE — 本記録における遺物番号・法量等の記載は、作家による創作上の設定(想定復元資料)であり、実在の考古資料ではありません。
断片化する絵画とリサーチパネル
PL. 01壁面 C — 会場記録パネルと並置

光の断層

暖色に断片化された地層は、三水の稜線に射す午後の光を、切片として記録したものと見立てられる。傍らには土地の由来を記すリサーチパネルが投影された。

連作絵画、色彩の推移
PL. 02壁面 D — 連続配置(3点組)

水系の記憶

青の断片から紅の流動へ。三水を貫く水脈が、氷のように固まった時間から、血のように流動する時間へと変化していく過程が示されている。

会場全景
PL. 03全景 — 壁面 C・D 対向

会場配置の記録

暖色と寒色、二つの語法が同じ壁の上で向かい合う。展示室全体が、ひとつの断面図として機能していたことがわかる記録写真。

会場、絵画三点とリサーチパネル
PL. 04壁面 B — 3点組、扉口に面す

光の三態

暖色・寒色・流動する紅——三様の断片が並ぶ壁面。扉の先へと続く通路の起点に配され、鑑賞者の歩みそのものを地層の踏査に変えていた。

アクリルケース越しに見る絵画
PL. 05中央ケース越し — 壁面 A

ケース越しの色彩

手前の遺物ケースに絵画の色彩が滲んで映り込む。この一枚に、壁の資料と中央の遺物という、本展の二つの主題がすでに重なって写っている。

十二枚の断片で構成された森、鑑賞者のシルエット
PL. 06壁面 E — 12点組グリッド

十二片の森

ひとつの森を、十二の異なる嘘によって立ち上げる試み。鑑賞者は断片のあいだを、自らの記憶で埋めながら歩くことになる。

廊下に展示された色彩豊かな絵画
PL. 07連絡通路 — 4点組

まだ名付けられていない流動

断片化の語法から逸脱し、色彩がひとつづきに流動しはじめている一群。当時はまだ言葉を持たなかったこの流動が、のちに左美都の絵画言語となる。

十二の断片絵画と大型絵画
PL. 08壁面 E・D 対向

対を成す断片と連作

十二片の森と、流動する紅の連作が、同じ空間で向かい合う。断片化と流動——のちに枝分かれしていく二つの語法が、ここではまだひとつの部屋にあった。

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Site Plan — 配置図

遺跡としての展示室

壁面に図版(絵画)、中央に遺物ケース(想定復元資料)——記録写真から再構成した会場の平面図。展示空間そのものが、ひとつの発掘区画として設計されていたことがわかる。

入口 / Entrance A 展示案内 C 左美都の風景 D 模擬考古資料 B 左美都の柱状節理と石筍 D
A区:展示案内
B区:柱状節理と石筍
C区:左美都の風景
D区:模擬考古資料
Specimens — 出土遺物

中央遺物:想定復元資料

会場中央のガラスケースに収められていたのは、実在の遺跡から出土したものではない。作家自身が構想した、三水という存在しない土地の記憶を宿す「想定復元資料」——虚構の考古学である。

木製匙、想定復元資料
SPECIMEN 01 — SMZ-2023-011

木製匙(もくせいさじ)

時代
平安時代後期(想定)
出土地点
三水(復元資料)
材質
広葉樹材
法量
全長 約9cm(推定復元)

木材資源に恵まれた三水の集落では、食器としての匙が日常的に用いられていたと想定される。生活道具としての静かな用途こそが、土地の記憶を最も雄弁に語ると考え、あえて祭器ではなく、この一片を選んで復元した。

土製耳飾の欠片、想定復元資料
SPECIMEN 02 — SMZ-2023-012

土製耳飾(欠片)

時代
縄文時代晩期(想定)
出土地点
三水・楯の城遺跡(想定)
材質
土製
法量
残存径 約3cm

年齢や役割に応じて身に着け替えられたとされる装身具。個人の成長と、共同体内での位置づけを示す象徴として機能していたと想定し、欠片としてあえて未完のまま提示している。

Fieldnotes — 聞き取り調査

ことばによる、二度目の発掘

アーティストトークの様子
ENTRY — 会期中 / アーティストトーク

断片化した絵画と、捏造された考古資料——一見無関係なふたつの実験について、津田は他の出品作家との対話の中で語る機会を得た。言葉にする過程で、両者が同じひとつの問いから生まれていたことに、津田自身が気づかされることになる。

ENTRY — 聞き取りメモ

「土地の記憶は、誰がどのように語り直すことができるのか」。絵画による断片化と、資料による捏造は、その問いへの、異なる二つの回答の仕方に過ぎなかった。この気づきが、展示後の制作の方向を決定づけていく。

ENTRY — 会場観察

解説者の言葉に耳を傾ける来場者たち。断片絵画の背後にある構造が、口頭によって初めて輪郭を持つ様子が記録されている。展示という視覚的な発掘に、対話という聴覚的な発掘が重なった瞬間である。

ギャラリートークの様子
Cross Section — 断面記録

地層の先に

表土層 — トライアル・ギャラリー 2023 遺物包含層 — 想定復元資料の制作 生活面 — 対話・気づき(アーティストトーク) 2024–2026 — 制作の継続、左美都という名の獲得 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業採択企画展示へ進む → Samizu 文化庁事業採択企画展示へ進む

「これは、まだ地図に載っていない土地の、
最初の測量だった。」

— トライアル・ギャラリー 発掘調査記録、より

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